特集

世界最大のアメリカ市場に挑む日本製品-海外市場開拓の魅力とは

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日本中小企業の海外進出

ニューヨークで開催された展示会「NY NOW」でのブース

—ジェトロの具体的な活動内容について教えてください。

河田:ジェトロは日本企業と海外市場の架け橋となり、日本の中小企業を中心に海外ビジネス展開のサポートを行っています。世界100カ所以上に事務所を構え、そのネットワークを生かし支援を続けてきました。輸出の経験がない企業でも日本での準備段階から現地での商談までのお手伝いをしています。

近年ジェトロ・ニューヨーク事務所では主にデザイン性の高い日本製生活用品のアメリカ市場展開サポートに力を入れており、全米で開かれている年4回の展示会を軸に活動しています。例えば、ニューヨークでは毎年夏と冬に開催されている全米最大規模の展示会「NY NOW」でギフト製品、キッチン用品、デザイン雑貨などを取り扱う日本企業へのコンサルティングおよび出展サポートを行っています。アメリカ市場への造詣が深く、日本企業の海外サポートの経験も豊富なMira Designの三浦社長にはコーディネーターとして協力いただいています。

—アメリカ市場で人気がある日本製品は?

三浦:市場にはトレンドがあり、近年のアメリカ市場のトレンドは日用品市場です。中でもキッチン用品の売り上げは前年比120%と脅威的な成長を見せています。リーマンショック以降、家族と食事の時間を増や
すなどアメリカ人の生活スタイルに変化が生まれました。それに伴い生活に役立つ日用品の需要が高まっています。キッチン用品をはじめとした日用品の需要が高まるなか、ユニークで品質の良い日本製品の評価は非常に高く、特にそのデザイン性と機能性が注目を集めています。

展示会に出展し始めた8年ごろ前は、和の小物雑貨、インテリア、着物などの日本の伝統工芸品を押し出しすぎていたため売れ行きはいまいちでした。伝統ももちろん大切ですが、物には時代に合わせた変化が常に必要で、変化することによって消費者をリードできる存在となれるのです。

—アメリカ市場進出にはどのようなステップが大事になりますか?

河田:物販に関しては、どれだけ多くの販路を確保できるかが成功の鍵となります。アメリカはもちろん世界中からバイヤーが集結する大規模な展示会への出展が商品を知ってもらう絶好の機会となり、ジェトロも展示会への出展支援を軸に日本企業のサポートを行っています。

前述の通り、市場にはトレンドがあります。市場に合った商品でなければ売れません。そのためにも入念な市場調査が不可欠です。ジェトロが実施したアメリカ市場調査を基に、展示会への出展が決定した企業さんと、トレンドに合った商品の選定を行います。必要であれば商品自体の改良もアドバイスすることもあります。

トレンドに合った商品が決定したら次は、その商品をいかに効果的にプレゼンするかが課題となります。ジェトロは9年前から展示会への出展サポートを行ってきました。初年度は4小間しかなかった日本からの出展企業も昨年は38小間にまで増え、日本企業を展示会の一区画にまとめ、その区画を「ジャパン・パビリオン」として打ち出すことにより、現在は「ジャパン・パビリオンに行けば品質の高いユニークな日本製品が見られる」とバイヤーにも認知されています。近年では全米で1500店舗以上を有するような超大手チェーンが多数ジャパン・パビリオンに商談に訪れます。

出展後に重要となるのが、信用チェック、商品の発送、カスタマーサポートなどの流通マネジメント業務の確立です。日本企業がアメリカ進出する際に必ず直面する大きな課題です。

三浦:私は8年前の初出展時からサポートしてきましたが、出展する日本企業は回を重ねるごとに変化しているのがうかがえます。そういう企業はアメリカの消費者がどんなものを求めているのかが徐々に分かり、それが商品にも表れます。バイヤー側から「こんな商品が欲しい」と求められることさえあります。これまでの経験から、展示会に出展している企業の中でも3つの要素が備わっている企業はアメリカ市場でも成功する確信しています。その3つの要素とは、第一にデザイン、色、価格というような商品力、第二にパッケージやカタログ紹介、展示会ブースデザインを含むプレゼン力、そして第三に流通、回収マネジメントなどビジネスの土台を支える現地のエージェントの存在です。

—アメリカ市場進出の魅力は?

三浦:幸か不幸か多くの日本企業は国内のマーケットだけで満足してしまっています。海外進出となると言語や文化の違いや先行投資が必要となるなど課題が多く、踏み込み難いのが現状です。また、敷居の低さから近年はアメリカではなく中国やシンガポールを進出先と考える企業が多いようです。アメリカの経済成長率はいまだ高く、毎日8000人の人口増加があり、市場の規模も世界最大です。アジア市場との大きな違いは、ビジネスのインフラが既に確立されている点と日本製品のような商品として優れているものが高く評価される点です。

中小企業も含め日本企業は世界に誇る開発力、技術力、仕事の計画力、そして独自のセンスを持っています。「強い商品力」を武器に世界最大の市場で勝負できる日本企業は非常に有利です。アメリカには国内だけで数百店舗を有する超大手チェーンが数多く存在します。そのうちの一社にでも商品を扱ってもらえれば、日本とは比較にならないほどの売り上げが期待できます。市場の規模が違います。まさにアメリカンドリームです。

また海外進出の際には「自社のどの商品がどのような顧客層に売れるのか」と、自社を客観的に見る様になります。それにより日本国内の市場での自社のビジネスも客観的に捉える事ができるようになり、副産物的に日本国内のビジネスの拡大につながるケースも過去に多く見てきました。

—日本企業がアメリカの市場で成功するために最も大事な要素は?

三浦:海外市場進出において最も大事なことはその市場でどのような商品が受け入れられ、その商品をどのようにマーケットしていくかを見極めるマーケティング力です。皆が同じ価値を共有する単一民族国家の日本市場でこれまで商売をしてきた日本企業にとっては大きなチャレンジといえます。「マーケットを見極める力」を持つ人材の確保、育成がアメリカに限らず海外市場でビジネス展開する際には最も重要となります。その力を企業が持つことができればアメリカに限らず世界中に日本製品は広がっていくでしょう。

—最後にアメリカ進出を検討している日本企業へのメッセージを。

河田:ジェトロが日本で開催しているセミナーなどを通じて、近年企業からのお問い合わせは増加傾向にあります。リソースが限られる中小企業にとって海外ビジネスを展開するということは大変大きなチャレンジです。準備も大変で、すぐに結果がでるものではありません。それでも成功してきた中小企業を多く見てきました。長期的な視野を持ち、世界最大のアメリカ市場で成功したいと強く願う日本企業と、共に挑戦できることを楽しみにしています。458

近年、海外進出を目指す中小企業が増えている

—ありがとうございました。

About

【プロフィール】
河田美緒(かわだ・みお)さん
1994年日本貿易振興機構入社。2012年7月よりアメリカ・ニューヨーク事務所に勤務し次長を務める。

三浦治義(みうら・はるよし)さん
1948(昭和23)年生まれ。山梨県甲府市出身。立教大学社会部卒業後、東洋火災海上保険に入社。西武百貨店系貿易商社を経て三浦ドレスを設立。1992年に会社を譲渡しカナダへ移住。1998年にアメリカへ移住。同年にMIRA DESIGN Corporationを設立、代表を努め現職に至る。2005年よりジェトロ海外コーディネーターを務める。

【関連サイト】
ジェトロ・ニューヨーク事務所
http://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/us_newyork/

MIRA DESIGN Corporation
http://www.mirausa.com/japanese_home.html

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