コロナ禍を経て3年ぶりの劇場開催となった北米最大の日本新作映画祭「JAPAN CUTS~ジャパンカッツ~」が7月26日~8月6日の12日間にわたり、ニューヨークのジャパン・ソサエティー(333 E 47th St)で開催された。
映画は3部門に分けられ、「THE FIRST SLUM DUNK」をはじめとした青春物語、ドキュメンタリー、アニメ、ドラマなどの現代映画を紹介する「Feature Slate」部門、新進気鋭の若手監督の長編映画を紹介する「Next Generation」部門、実験映画、アニメーション映画など新たな方向性を模索する短編映画を紹介する「Short」部門に、坂本龍一を追悼する16ミリドキュメンタリー作品を加えた全29作品を上映。多くの日本映画ファンが集まり、劇場は満席になるほどの盛り上がりを見せた。
今年のセンターピース作品は、KENTARO監督作品で柳楽優弥さん主演の「ターコイズの空の下で」(2021年)。物語は1人の若い青年が文化も言語も違う異国モンゴルの地を旅することで、自分自身を見つめ直し成長していく姿を描くロードムービー。上映後はKENTARO監督、柳楽さんが舞台あいさつと質疑応答を行った。
舞台あいさつで、KENTARO監督は「以前モンゴルを訪れる機会があり、その当時の経験から、いつかモンゴルの地を舞台に映画を作りたいという思いがあった」と話した。作品中にせりふが少ないことについては、「言語は違えど心は通じ合うというメッセージが込められている」と流ちょうな英語で受け応えた。
主人公のタケシについて、柳楽さんは「中身がよろしくない主人公が言語も文化も異なるモンゴルという厳しい地でさまざまな経験を通し成長していく、その過程が楽しみだった」と思いを語り、「尊敬する役者が多く、学ぶことがたくさんあった。アムラ(主人公と共に旅をするモンゴル人)からも学ぶことが多く、良い経験だった」と、自身の俳優観についても語った。
質疑応答では「出産シーンは実際にモンゴルで行われているもの?」「キャスティングはどのように行った?」など多くの質問が寄せられ、KENTARO監督は「モンゴルでのカルチャーの違いに苦戦しながらも撮影を進めた」と当時の苦悩をユーモアを交えながら振り返り、会場の大きな笑いも誘った。