毎年夏に2週間にわたって行われる米国で最も大きな演劇祭の一つ「ニューヨーク国際フリンジフェスティバル」が今年も、ニューヨーク各所で開催されている。同イベントはダウンタウンの20以上の劇場で、審査を勝ち抜いた200以上の劇団が公演を行い、今年は海外招聘(しょうへい)作品として上田一豪さんが主宰する日本の劇団「Tip Tap」のオリジナルミュージカル「Count Down My Life」が選ばれ、8月9日~13日に公演を行った。
同作品は、30歳を目前にして結果が出せずにいる脚本家志望の男と、突如現れた彼のファンと名乗る青年が繰り出す、人生の意味を問い掛けるロックミュージカル。作品の上演にあたり渡航費や宿泊費、人件費などの経費全てを自分たちで賄う必要があったため、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」を通じ目標額70万円を上回る91万3,000円の支援を受け、実現した。
キャストやバンド、スタッフは全員日本人で、上演も日本語だったが、アメリカ人に向けた英語字幕を設置し、観客を楽しませた。劇場内には観客の半数を超える現地のニューヨーカーが足を運び、千秋楽のチケットは完売になるほどのにぎわいを見せた。日本人、アメリカ人問わずコミカルな場面では笑いが起き、クライマックスで感動に包まれた場内ではすすり泣く声も聞こえた。a woman役の飯野めぐみさんは「ニューヨークで公演することを目標にこの作品を日本でやってきた。公演が決まったときは驚き、とてもうれしく思った。お客さんの反応がダイレクトに伝わり、不安や緊張が一気にエネルギーに変わった」と話した。
公演を見に来ていたアメリカ人女性は「音楽もストーリーも何から何まで楽しめたし、すごく感動的な作品だった」と絶賛。現地の日本人は「日本語と英語ではミュージカルの雰囲気も楽しみ方も全く異なり面白い」と話した。
今回は15分でセットアップする条件があったためステージも日本版とは大きく変更し、小道具もI ● NY(●はハートマーク)のマグカップを使用するなどニューヨーク仕様の舞台美術となった。a youth役の染谷洸太さんは「ニューヨークで舞台に立つことが僕自身の夢だったので、とてもうれしく幸せに思う。お客さんの反応が予想以上によかったので、のびのびと演じる事ができた」と話し、a man役のtekkanさんは「ニューヨークで受け入れてもられるのかと不安もあった。劇団の入れ替わりが早かったので、役に集中する時間もままならない状況での舞台だったが、とにかく楽しかった。貴重な経験と出会いに感謝している。またやりたいと思う」と話した。