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ニューヨーク上演中オペラ情報 (2019-20) 
今更聞けない!オペラの楽しみ方は?

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オペラとは


オペラ上演前の会場の様子

オペラの歴史
オペラはボーカルとオーケストラ、ドラマ、ビジュアルアートとダンスなどが融合した総合芸術で、およそ400年前のルネッサンス期のイタリアで生まれました。

当時のフィレンツェではアーティスト、政治家、作家、ミュージシャンや知識人などが集まって「カラメータ」と呼ばれる音楽サークルを結成して活動していました。メンバーは当時の音楽は没落してきていると信じていて、どうしたら改善されるか協議を続けていました。

その話し合いの中で古代ギリシャ音楽を、ドラマを通してを復活させようというアイデアが生まれ、その考えを基にしてヤコポ・ペーリによって作曲された「ダフネ」(1597)が世界初のオペラと言われています。

バロック時代(1600年頃-1750年頃)にはオペラは華麗なアリア(旋律的な特徴の強い独唱曲)と華やかな可動式舞台装置でヨーロッパ中を魅了しました。17世紀と18世紀にはスター歌手も何人か登場しました。当時のソプラノは男の子の時に去勢手術を受けた「カストラート」と呼ばれる男性が演じることも。今日では人道的な理由で禁止されて女性が演じています。

19世紀後半にはオペラの全盛期を迎え、ジュゼッペ・ヴェルディやリヒャルト・ワーグナーのような優れた作曲家が活躍。20世紀にも作曲家のジャコモ・プッチーニが「蝶々夫人」や「トゥーランドット」など名作を生みだし一時代を築きました。

社会におけるたくさんの葛藤や衝突など人が生き続けて伝えるべきストーリーがある限りオペラは伝承され繁栄を続けます。


メトロポリタン・オペラとは
世界三大歌劇場の1つ、メトロポリタン歌劇場(The Metropolitan Opera=通称MET:メト)は1883年に設立され、最初のオペラハウスはブロードウェイ39丁目から40丁目に建てられました。

1966年9月にはリンカーンセンターに十分な舞台設備を備えた新しいオペラハウスが新設されました。


噴水の奥に存在感を醸し出すMET (C)Jonathan Tichler/Metropolitan Opera

MET観客席数は3800席、195の立見席を含めると約4000席となる (C)Jonathan Tichler/Metropolitan Opera

2019-20シーズン 注目作品

『トゥーランドット(Turandot)』

豪華な衣装や舞台装置も見所のひとつ (c)Marty Sohl/Metropolitan Opera

ジャコモ・プッチーニが作曲した最後のオペラで、劇中で歌われる「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」はオペラの代名詞的存在となっています。数々映画やCM、フィギュア・スケートで繰り返し使用しされているので聞きなじみのある方が多く初心者でも入り込みやすい作品です。

いつとも知れない時代の北京が舞台で美しくも冷酷なトゥーランドット姫と、求婚者に謎をかけ、答えられなければ首をはねる、そんな残酷な姫に恋したカラフ王子の物語です。

昨シーズン43歳という若さでMET音楽監督に就任したヤニック・ネゼ=セガンの指揮が見どころのひとつです。


『ポーギーとベス(Porgy and Bess)』

1920年代の雰囲気や街並みが伝わる舞台 (c)Tristram Kenton/English National Opera

次に注目したいのが、『ポーギーとベス(Porgy and Bess)』です。この作品は、オープニングナイトのパブリックビューイングでも上映されて話題となったシーズン開幕作品で、ガーシュウィンの最高傑作として再び注目を集めています。

舞台は1920年代のアメリカの港町チャールストン、そこに暮らす足の不自由なポーギーと夫の賭博トラブルが原因でポーギーと一緒に暮らすことになったベスの愛と葛藤が巧みに描かれています。

この作品は多くの古典のオペラ作品と違い、ジャズなどの黒人音楽を多く取り入れている点が注目すべきポイントのひとつです。ガーシュウィンは自らチャールストンに出向き、黒人音楽を研究して作曲したと言われています。第一幕で歌われる「サマータイム(Summer Time)」は、これまでたくさんのジャズアーティストに取りあげられてきました。

悲しくも力強いエリック・オーウェンズが歌いあげる、哀しみと愛に満ち溢れたアメリカ・オペラの名作は必見です。


『蝶々夫人(Madama Butterfly)』

斬新な色遣い使いの衣装が魅力のひとつ (c)Richard Termine /Metropolitan Opera

アカデミー賞監督アンソニー・ミンゲラが美を追求した注目作品『蝶々夫人(Madama Butterfly)』。日本の長崎を舞台にした恋愛物語で、日本人なら一度は見ておきたい話題の作品です。

有名な楽曲も多く、作品中の「ある晴れた日に」は、フィギュアスケーターの浅田真央選手が使用した楽曲としても有名になりました。アメリカ海軍士官の夫ピンカートンを信じて待つ蝶々夫人の一途な想いを描いた名曲です。

この作品の注目ポイントは、世界でも数少ないリリコ・スピント・ソプラノ歌手ホイ・へーの歌声です。リリコ・スピントとは、ソプラノの中でも比較的力強い声で、強い喉が必要とされるジャンルです。そんなホイ・へーが、その美しい歌声で叙情的でありながら力強く情熱的な蝶々夫人を熱演します。

もう一つ注目なのが、東洋の美を幻想的に表現した衣装です。衣装デザイナー ハン・フェンによって、当時の着物の形式を一部残しつつも、どこか新しさを感じさせる雰囲気に仕上げられています。細部までこだわって作られた衣装も見どころの一つでしょう。

オペラの楽しみ方


Opening nightの様子 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

セミフォーマル程度の服装で行くのがおすすめです。正装でなくて構いません。服装に関しては人それぞれで、中にはドレスやスーツを着た人も居れば、普段着の人もいます。オペラ鑑賞というと敷居が高い印象がありますが、実は普段よりも少しきれい目くらいの服装で気軽に楽しむことができるのです。

鑑賞作品選びに関しては、オペラ初心者の方は『トゥーランドット(Turandot)』や『蝶々夫人(Madama Butterfly)』など、舞台装置・衣装が華やかな作品がおすすめです。見た目にも美しく、英語やイタリア語が苦手な方でも比較的楽しみやすい作品です。

最後に、携帯電話スマートフォン等の電子機器類は電源を切って、カメラでの撮影を控えるのも大切なマナーです。

オペラを日本で楽しむには

本場メトロポリタン歌劇場で上演されるオペラ演目を、世界中どこからでも楽しめるようにしたのが「METライブビューイング」。5.1chサラウンドの音響と10台以上のカメラを使用し、日本の映画館でも劇場の臨場感とダイナミックなパフォーマンスが楽しめます。さらに、幕間に行われる「METライブビューイング」の特典映像にてキャストインタビューや舞台裏映像も特別公開され、メトロポリタン・オペラの魅力を余すことなく楽しむことができます。


キャストインタビュー (C)Marty Sohl/Metropolitan Opera

日本全国の映画館で日本語字幕付きで鑑賞することができ、ネット予約すれば座席指定ができる通常よりもお得な前売券も購入できます。


METライブビューイング 上映スケジュール
トゥーランドット / プッチーニ
公開 / 11月15日(金)~11月21日(木) ※東劇のみ11/28(木)までの2週上映

マノン / マスネ
公開 / 11月29日(金)~12月5日(木)

蝶々夫人 / プッチーニ
公開 /2020年 2月7日(金)~2月13日(木)

アクナーテン / フィリップ・グラス
公開 /2020年 2月21日(金)~2月27日(木)

ヴォツェック / ベルク
公開 /2020年 2月28日(金)~3月5日(木)

ポーギーとベス / ガーシュウィン
公開 /2020年 4月3日(金)~4月9日(木)

アグリッピーナ / ヘンデル
公開 /2020年 4月10日(金)~4月16日(木)

さまよえるオランダ人 / ワーグナー
公開 /2020年 5月8日(金)~5月14日(木) ※東劇のみ5/21(木)までの2週上映

トスカ / プッチーニ
公開 /2020年 5月22日(金)~5月28日(木) ※東劇のみ6/4(木)までの2週上映

マリア・ストゥアルダ / ドニゼッティ
公開 /2020年 6月5日(金)~6月11日(木)


「METライブビューイング」: www.shochiku.co.jp/met/

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