特集

世界初・日本食レストランが「6つ星」の称号獲得
NYのモダン日本食レストラン「MEGU」社長 横山公一さんに聞く

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—インターナショナル・スターダイヤモンド・アワード受賞おめでとうございます。今回の受賞について聞かせてください。

MEGU Modern Japanese Cuisineの横山公一社長

MEGU Modern Japanese Cuisineの
横山公一社長

 今回の受賞は本当に期待していませんでした。「ザ・アメリカンアカデミー・オブ・ホスピタリティー・サイエンス」という団体自体は知っていたのですが、5つ星の賞が主流なので、受賞するまでは6つ星の存在を知らなかったんです。調べてみると、世界各国でトーマス・ケラーさんやアラン・デュカスさん、ジョエル・ロブションさんなど知名度の高いシェフがいるレストランは5つ星で、世界で唯一6つ星を取っているのがジョン・ジョルジュさん。それに続く(世界)初の日本食の6つ星受賞は本当にありがたいですし、すごく光栄に思っています。

 これはMEGUだけでなく、日本人として、日本食が認められた一つの「区切り」みたいな受け止め方をしています。

—受賞のカギとなったMEGUのホスピタリティーについて。

MEGUミッドタウン店

MEGUミッドタウン店

 MEGUではいつでも最高の食材を世界中から探しています。MEGUを運営する「フード・スコープ」社が掲げるミッションは、最高の食材をスコープ(調査)し、モダンな日本食の形で提供すること。最高においしく品質の良い食材を探し続けてきた努力と、オープン当時から今日までの妥協しない姿勢が今回の受賞で大きな要因の一つとなりました。お客さまに喜んでいただいているのはもちろん、AAHSからも認知されました。

 ほかにも、それぞれの料理が美しく際立つような、最良のプレゼンテーションを作り出すことを心掛けています。備前や信楽、御影、九谷などの伝統的な陶器を使用することで、一層の魅力を引き出しています。エンターテインメント性ももちろん重要な点です。ですから、しょうゆのゼリーを備長炭で溶かした「コニャック・フランベ」や、テーブルで混ぜ合わせるタルタルソースなど、とてもユニークなプレゼンテーションも用意しています。

しょうゆゼリーを備長炭で溶かす<br />
「コニャック・フランベ」

しょうゆゼリーを備長炭で溶かす
「コニャック・フランベ」

 サービスは現場で変わってくるのですが、一番大事なのは「ネバー・セイ・ノー」サービスです。お客さまが難しいリクエストをされた時も、もしその食材がない、料理ができない時でも、ノーと言わないサービスをする。スタッフにそういう時にはどういう対応をするのか、どういった方法でお客さまのリクエストに応えられるのかを教育しています。

 できる限りお客さまのニーズに応えられるようなサービス、そしてわれわれの扱っている素材や食材、調味料もすごくユニークなものをいろいろ使っているので、それをできるだけお客さまに知っていただけるようにするのもサービスの一つです。

 日本食をまだまだ分かられていないお客さまも多いので、そういった中で少しでも日本食の素晴らしさをサービス面でも出せれば。スタッフはアメリカ人や現地の人も多いですが、「わびさび」という部分をスタッフにも教えていますし、そういった部分をお客さまに提供して「ありがとう」と言っていただきたいですね。

—「おもてなし」のポイントは?

MEGUミッドタウン店

AAHSのジョセフ・チンクエ会長と談話

 例えば、すごく大事な友達や家族、親せきが家に来た時に「何かできないか」という点ですね。「茶」の世界と一緒なのですが、そういった部分が根本的にベースにあります。そのメンタリティでいつもお客さまに接すれば、絶対に分かっていただけます。

 食べられないものをお客さまに出してしまった時でも、それを瞬時に察して何か違うものを出したり、「大事なお客さまを家に連れてきて素晴らしい思い出を作ってあげる」――その気持ちが本当のおもてなしだと思います。

―もてなすという意味でメニューの開発にも積極的と聞きました。

スタッフに指導する接客横山社長

スタッフに接客指導する横山社長

 メニューの開発は、常に新しいものを定期的に出していかないと、お客さまのエキサイトメントがなくなってしまうという点で、おもてなしにもつながること。世界にも展開していく中で、挑戦もたくさんありました。例えば、モスクワでオープンした時には、アボカドをあまり食べる国柄ではないため、いいアボカドが入らないし食材も限られています。そこでクオリティーが良くないという理由で、われわれが出したかったメニューから削りました。

 一番難しかったのはカタールです。中東のカタールでは肉がコーシャー(ユダヤ教の食事規定に従った食品)でなくてはいけないのです。われわれが今アメリカで使っている米国産神戸牛をそのまま使えるのかというとその面では使えない。ですので、コーシャーの認定を持った米国産や豪産神戸牛を扱っている所を探して提供しています。

品質を大事にプレゼンテーションにも工夫を凝らしたステーキ

品質を大事にプレゼンテーションにも工夫を凝らしたステーキ

 それからカタールでは(宗教上)お酒が使えないということ。やはり日本食の料理ではもちろんだしもそうですが、みりんやお酒、しょうゆ、砂糖が基本。そういったベーシックな部分を覆して、どうしたら酒を使わずに同じメニューを同じ味に近づけられるかというメニュー開発にもかなり取り組みました。

 インドでのオープン時には、現地にベジタリアンのお客さまが多いので、野菜をメーンにしたメニューも何点か開発しています。そういった開発の中で素晴らしかったもの、ニューヨークでも喜んでもらえるのではないかというものは、逆輸入と言うか、ニューヨークにのメニューに加えたものもあります。

—世界に展開する中でのそういった気遣いが、今回の受賞につながっているわけですね。

MEGUトライベッカ店

MEGUトライベッカ店

 本当に大事なお客さまが家に来られた時に、それが中東からのお客さまだったら彼らの宗教や文化に基づいて、気付かなかったことをできるだけ調節したいじゃないですか。それと一緒で、(MEGUの)お客さまは常に自宅に招いた大事なお客さまとして、最大限のおもてなし、柔軟さに加え「わびさび」の心を持ちながら日本の素晴らしい文化をお客さまに伝えたい。

 日本の食は素晴らしいと思うので、その文化をモダンな形で、いろんな世界の人に受け入れられやすいような食材とプレゼンテーションで、最高の物を出していきたいと思っています。

―今回の受賞を通して、東日本大震災から1年を迎えた日本の皆さんへエールを送りたいと伺っています。初めて日本食の6つ星受賞を知る方々にメッセージをお願いします。

 やはり震災後、われわれも赤十字へ募金させていただきましたが、今回の受賞は本当に日本人として誇りあること。少しでもこの受賞(の話)を聞いて日本人としてプライドを持っていただき、元気を与えたい、望みを与えたいと思っています。

 海外で日本人がこういったことを頑張ってやっていて、それが認められた。それを読んだり見ていただいた日本の方々が「あ、やっぱり日本人で良かったな」とか「やっぱり日本の美意識や食文化は、世界に負けないビューティーを持っている」と。そういった部分で少しでもわれわれMEGUを通して感じていただけたら、これはもうすごくうれしいことですね。

—ありがとうございました。

インターナショナル・スターダイヤモンド・アワード受賞イベント開催も

 5月7日には、インターナショナル・スターダイヤモンド・アワード獲得を記念し、受賞イベントの開催を予定。VIPを招待し華やかに行われる式典では、ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーター選手やハリウッドの一線で活躍する女優アン・ハサウェイさん、その他政財界からも多数の著名人の来場を予定し、不動産業界の実業家ドナルド・トランプ氏がトロフィーの授与を行う。立食形式のレセプションのほかに、同店が誇る食事とオーケストラのコラボレーションによる、これまでにない新しい形で日本食をプレゼンテーションする。

【プロフィール】
横山公一(よこやま・こういち)さん。1976(昭和51)年生まれ。大阪府箕面市出身。マサチューセッツ州のブラッドフォード大学グラフィックデザイン学科で修士号取得後、ニュージャージー州のミツワスーパーマーケットでの営業担当を経て、2003年にMEGUのオープニングスタッフとして入社。キャプテン、副総支配人、最高執行責任者を務め現在に至る。

【MEGU Modern Japanese Cuisineについて】
MEGU Modern Japanese Cuisineは、2004年にマンハッタンのトレンディーなエリアとして知られるトライベッカにオープン。日本語の「恵」を語源に日本の食文化とそのこだわり、そして、日本の美しい文化や芸術を世界に紹介すべく誕生しました。以降、マンハッタンのミッドタウン、モスクワ (ロシア)、ドーハ(カタール)、ニュー・デリー(インド)に続き、2012年12月にはグシュタード(スイス)、2013年にはムンバイ(インド)での出店も予定するなど、グローバルな展開を見せている。

「MEGU Modern Japanese Cuisine」ウェブサイト
http://www.megurestaurants.com/

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