1月1日に就任したビル・デブラシオ新ニューヨーク市長が、セントラルパークの名物馬車を廃止すると発言し、物議を醸している。12年に及ぶ長い任期を終了したマイケル・ブルームバーグ元市長に替わっての就任とあって市民の期待は高かったが、廃止案に対しては反対の声が多く上がっている。
ニューヨーク・セントラルパークの観光名物の一つとして50年以上人々に親しまれてきた馬車に対し、動物愛護団体は長年にわたり廃止を訴えていた。同団体は馬車馬としての訓練が非人道的であり労働時間が長いこと、交通量の多い都会は馬を働かせるべき環境ではないことなどを理由に、馬車は動物虐待であると主張。この訴えに対し、昨年の市長選の際にデブラシオ新市長は廃止案を公約した。
一連の動きに対し馬車の運営組合は、馬に十分な休養時間を与えていることや、馬の生態を理解した上での労働環境下で働かせていることなどを主張し、動物虐待は行っていないと廃止案に反対。廃止法案が通れば市を訴える方向で動いている。
一方で、「廃止理由は本当に動物虐待なのか」と懐疑的な声もささやかれている。市内の動物愛護団体の団長で同廃止案に大きく関与しているスティーブ・ニスリックさんは不動産業も行っており、地元メディアによると「現在馬小屋として使用されている土地を買収し、ホテル建築を計画中」とある。馬車廃止案の実行を約束に、市長選では馬車支持の立候補者に対抗する広告費に7740万ドルを費やすなど、新市長に多額の支援金を援助していた。また、市民からは、NYPD(ニューヨーク市警察)の騎馬隊の馬に関して全く問題視していないことに対する疑問の声も上がっている。
廃止法案の採用の見通しは現時点では確実ではないが、案が通った場合は現在と同じ御者たちを雇用し8人乗りの電動車両に替える計画が出ている。一方、New York Horse City Councilの会長は1月14日、飼育環境や労働環境が整っていること、馬車はニューヨークの歴史的象徴であること、市に多額の経済利益をもたらしていることなどから法案に対して反対の意向を示した。