ニューヨーク州都市交通局(MTA)が進めているハリケーン「サンディ」のダメージ修復工事で、次のターゲットとなっている地下鉄Lラインが通る「カナルジー・トンネル」の工期を巡り市内で論争が起こっている。
MTAは2012年にニューヨークを襲ったハリケーン「サンディ」の修復工事を進めており、次の修復工事のターゲットとなっているのが、マンハッタンとブルックリンの間に位置するカナルジー・トンネル。人口密度の高いブルックリン北部とマンハッタンを結ぶ地下鉄Lラインが通るトンネルとあり、住民やビジネスオーナーと論争が起こっている。
ブルックリン北部はここ十数年で最も大きく成長したエリア。家賃の安さに魅せられクリエーティブな人たちが住み着くようになったことから、徐々に個性的なショップやレストラン、バーなどが出店し、やがて大きなコミュニティーを作り上げた。中でもウイリアムズバーグエリアは最新カルチャーの発信地としての位置を確立し、週末の夜などは若い人たちで大いににぎわっている。周辺地区に住む人も爆発的に増え、Lラインはマンハッタンとブルックリンを行き来する人たちに欠かせない交通網となっており、1日平均30万人が利用するといわれている。
MTAは修復工事について、地元の居住者やビシネスオーナー向けに説明会を開いてきたが、路線の完全閉鎖で修復作業を一気に終わらせるか、一部分の閉鎖で修復を長期にわたって行うかという選択肢を提示しつつ、いずれの場合の工期も明確にはしていない。完全閉鎖の場合でも最低1年以上はかかると見られており、地域経済への打撃は免れないという見方が強い。先行きの不透明さから、すでにビジネス拠点を移す検討を始めているビジネスオーナーもおり、コミュニティーの衰退も懸念されている。