マンハッタンの地下鉄の車両全体を利用し、単独のスポンサーが車内の壁を埋め尽くすアーティスティックな広告が収入アップに貢献し、話題を呼んでいる。
ニューヨーク州都市交通局(Metropolitan Transportation Authority、以下MTA)は昨年10月、グランドセントラル駅とタイムズスクエア駅間を運行する地下鉄車両を「ヒストリーチャンネル」の人気番組「Cities of the Underground」のPR用にデザインして走らせた。その後飲料ブランドの「Vitamin Water」、人気TVドラマ「Dark Blue」などに続いた。
今年10月から登場した大手ホテル「ハイアット」の広告では、クラシックな内装、ユニークな外装、車内は細部まで工夫が施されたユーモラスなデザインの異空間に「変身」させ、乗客を魅了している。大手広告会社「CBS Outdoor」制作による大掛かりな広告は、薄さ約3.5ミリの伸縮性のあるラミネート加工ビニールで車両全体を包むような形で仕上げられ、座席からドアまで精密にカバーされている。
MTAの昨年度の経営赤字は6億2,100万ドル(約620億円)。今年6月28日、2003年以降6年ぶりにメトロ乗車運賃を2ドルから2ドル25セントへの値上げをするなど、厳しい経営難に直面する一方、ここ数年の広告収入が大きな収益効果を上げている。利用乗客数第1位のタイムズスクエア駅(年間利用客=約6,088万人)と2位のグランドセントラル駅(同=約4,500万人)を結ぶシャトルを利用した広告収入は、年間100万ドル(約1億円)にも上る。
MTAの広告収入総額は、過去10年間で約4倍の上昇を遂げ、昨年度には1億2,500万ドル(約125億円)にも達し、今後最も期待される収入源の一つとなりそうだ。