特集

〈ビジネス〉アメリカで生き抜く術
ニューヨークで新規ビジネスの立ち上げから4店舗展開。「QB HOUSE USA INC.」現地法人社長・古谷亮二さんに聞く

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 ニューヨーク経済新聞ではアメリカ・ニューヨークで活躍するビジネスパーソンに、アメリカでの経験や生き抜くための方法を「特集:アメリカで生き抜く術」として特集インタビューする。

 第1回目は、ニューヨークでヘアカット専門店を4店舗展開する「QB HOUSE USA INC」現地法人社長古谷亮二さんに、ご自身の仕事についてやアメリカで生き抜く術について聞いた。

ビジネスについて

—古谷さんの現在の業務について教えてください。

 「QB HOUSE USA INC.」現地法人社長として経営面全般を担当しています。店舗運営や資金管理、人材開発、戦略の立案から実行、新店舗開発など広範囲に及びます。また今後の北米展開に向けて、北米主要都市にも定期的に視察に行っています。

 現在はコロナの影響下にあるため、戦略の練り直しや従業員のケアを中心に行っています。従業員の理美容師が安心して働くことができ、お客さまにも安心してご来店いただけるような環境づくりを最優先事項として、コロナ前以上に店内作りに気を配り、コミュニケーションを多くとるようにしています。

—古谷さんの1週間のスケジュールを教えてください。

 午前中はほぼ店舗巡回をし、現場や周辺地域の状況を確認するとともに、理美容師やお客さまの様子を伺うようにしています。経済活動再開後からは市内の様子が毎週変化していることから、常に柔軟に変化できるようにするため、できるだけ長い距離を歩いて、他業種の様子や人の流れの変化を見るようにしています。戦略はいつも歩いている間に考えています。

—ビジネスのユニークなポイントを教えてください。

 QB HOUSEの大きな特徴は、カットのみに特化したシンプルなサービスを低価格・高品質で提供しているところです。ニューヨークに1号店を出店した時は、低価格であることから、それだけで品質に不安を抱くニューヨーカーが多いと言う意見もあったことから、ブランド名に「TOKYO」の文字を入れたり、和のテイストを加えたりなど日本発の印象を与え、入店動機を持ってもらえるよう工夫しました。技術とサービス力の高いニューヨーク在住歴の長い理美容師を採用することができ、低価格の意味(時間の価値)と高品質であることの関連性を深めることができました。

 また、予約なしのウォークインのみで対応するため(コロナ前まで)、理美容師のチームワークを大切にしてきました。理美容師は個の意識が強いのですが、チーム力を高めることによって多くのお客さんに安心感を与えられるということに気付いて共有してから、来客数が飛躍的に増えました。

仕事をする上でのモチベーションについて

—仕事をする上でどのようにモチベーションを高めていますか?

 アジアで大成功しているQBハウスのビジネスモデルを、立ち上げ担当としてニューヨーク事業を成功させ、北米展開をするという目標がありますので、やはり大きな夢を持ち続け、実行に移すことが大事だと思います。

 ただ今まで順調に成長を続けていて、いよいよ他の都市への展開も見据えはじめた時に、コロナ感染拡大で長期ロックダウンとなってしまいました。この影響は日本をはるかに上回るもので、未だにマンハッタンに人が戻って来ていません。QBハウスのみならず、マンハッタンで展開しているサービス業、小売業はとても苦しい状況となっています。既に閉店したところもたくさんあり、QBハウスも生き残れないかもしれないと言う不安さえよぎりましたが、それでも立ち上げからともに戦ってきた理美容師は、今もQBハウスの復活を信じて疑っていませんし、常連のお客さまだけでなく、新規のお客さまも増えていますので、何とか継続したいと考えています。

 ニューヨークは過去にもいろいろな災難があっても、毎回不死鳥の如くよみがえっていますので、今回も必ず元に戻ると信じています。そして、会社としても、個人としても、生き残る為には、常にその時その時の変化にどのように柔軟に対応できるかどうかだと思っています。ただひたすら元に戻るのを待つのではなく、積極的に変化をして行こうとみなに伝えています。

ニューヨークで働く魅力について

—ご自身の経験から感じるアメリカ・ニューヨークで働く魅力はありますか?

 ニューヨークで働くことになるまで、自分の海外経験は学生の頃から含めて20年近くになっていたのですが、改めてニューヨークは別格だと思いました。まず、「ニューヨーク」と言う名前の力なのでしょうか、QBハウスの日本やアジアの理美容師は2500人いるのですが、進出した時の社内の反応は凄いものがありました。QBシンガポールの社長をしていた時は特に何も反応はなかったので(苦笑)、そのギャップには本当に驚きました。1号店オープンの様子は日本でもテレビ放送されたのですが、親戚も友人も、前職の先輩後輩などもお祝いの連絡をしてくれました。ニューヨークで仕事をすると言うことは、ニューヨークを憧れに思う人達からは「すごい、羨ましい」と思われるのだと感じます。一方で、ニューヨーク在住歴が長い諸先輩方からは「ニューヨークは難しいよ」「瞬殺されるでしょう」「撤退したところをいっぱい見てきた」と厳しいお言葉を沢山頂きました(笑)。

 そこで、自分のモチベーションとしては、やはりニューヨーカーに認められるようになりたいと言う想いが新たなモチベーションとなりました。確かに困難なことはたくさんありましたが、事業開始から3年が経過して4店舗目を出店したあたりから、なんとなく認められ始めたような気がしています。ニューヨークは「来るもの拒まず」で弱者に厳しいところもある反面、多様性を受け入れる懐の深さを感じます。自分を高めるためにも挑戦する場所として最も適した都市だと思っています。

—ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りします。

About

【プロフィール】

1971年生まれ。千葉県出身。
前職で2001年から米国・ワシントン州で駐在後、2008年からQBハウスを運営するキュービーネットホールディングス(株)に入社。同年にシンガポールにあるQB NET INTERNATIONAL PTE LTD.に出向。2014年からにManaging Director、その後2016年にQB HOUSE USA INC.を立ち上げ、Presidentとして事業拡大に携わる。

【QB HOUSE USA INC.について】

QB HOUSE USA INC.は、日本、アジアで700店舗以上展開するキュービーネットホールディングス株式会社が2016年に現地法人として米国に設立したヘアカット専門店。2017年6月に欧米初店舗となる「QB HOUSE TOKYO」1号店をミッドタウンにオープン。現在ではニューヨーク市内に4店舗を展開。一般のサロンで行うシャンプーやブロー・シェービングなどのサービスは含まず、カットのみに特化したサービスを短時間でお手頃に提供する。

「QB HOUSE TOKYO」ウェブサイト
https://qbhouseusa.com/

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